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ジャンプを斜めと正面から見るブログ

※火曜返信。※2017年度連載作品の記事に個人的評を追加。※週刊少年ジャンプの掲載順バレ・打ち切り戦線考察、掲載順データなどを取り上げてます。内容バレは取扱いません。

2018年度金未来杯感想・最終版

残暑見舞いにやってまいりました。

私の判断基準は、読み切りとして一定水準以上は最低条件、金未来杯ですから連載のプロトタイプとしてどうかでも判断します。

あくまでも個人の感想です、何の参考にもなりません。
一個人の戯れ言としてお気軽にお目通し下さい。
この記事は更新の度に上がります。










【仄見える少年/支持する】
最後まで読んだら面白かったかなと。
霊怪という異質を孕んだ世界観が画面全体からよく現れていますし、猫も轆轤首も上手い具合に気持ちが悪い。景は相談になんだかんだ付き合う様やしっかりと人を助ける姿がちゃんと主人公していますから、恐怖と王道を両立出来ていると思います。
比較的簡易な絵とおどろおどろしさが良いバランスを取れているのも好材料。この手の題材でメリハリと見易さが備わるのは良い武器です。
話の運びも猫と轆轤首のミスリード、景が只者ではないという全体の流れ、それ自体は最後まで読ませるだけのものはあったのではないでしょうか。

難を挙げるとすると、まずは中盤の不必要なコメディのノリ。延々重苦しいままだと最後まで持たないから入れたいのは分かるんですが、それが挟まるタイミングがシリアスな流れを切る作用を狙ったように発揮してしまっている。
具体的に言えばコメディは姉の電話で霊怪が本物であると判明するまでにして、電話をキッカケに空気がピリピリする感じを途切れさせないで欲しかったかなあと。実際その辺りでしつこさを感じ、これは駄目かも知れないと思ったもので。
もう一つは七瀬が引きずり込まれようとする中で姉が景に見捨ててもいいと促す所。対処すべきと景を乗っからせたのに、挑発的な意味であろうと盛り上がる中では違和感として引っ掛かってしまいました。ちゃんとクライマックスへ向けて上手に持っていっていただけに、これは残念。

でも繰り返しになりますが、最後まで読んだら面白かったかなと。何より怪異を描く上での説得力とバランスが必要最低限以上に備わっていますから、少年漫画の怪奇物としてしっかり完成されていたと思いました。
決めゴマが惜しい感じで物足りなかったなとかこのままだとちょっと呪術と被るかなとか思いはしましたが、その辺は連載化に向けて修正したり力を付ける中で乗り越えてもらわないといけない範囲で、明確なマイナス材料とまでは言えないのではないかなと。

取り敢えずトップバッターに相応しい作品だったのは間違いないです。キャッチーさが足りてませんけど、優勝しても特に不満は無い出来でした。





【血液ヌル/支持しない】
のっぺりという言葉がよく似合う作品でした。
話はまあ寄生物としてはスタンダードな部類だったと思います。ヌル型に寄生の理由を求めたのが個性と言えば個性なのでしょうか。
しかし運びの大体を台詞に任せてしまっているので特に何も盛り上がらないし、引かれない。これが奇抜な発想の元に積み上がった話ならば説明が丁寧な方が親切で引き込まれやすいのでしょうが、悪く言えば想像の範囲に収まりがちな話なのでそれを台詞で回されても退屈と言ってしまえるかも知れません。

加えて絵と言うか画面に起伏が乏しい。特に表情が、とにかくどの場面でも皆似たような顔で感情の高ぶりや静まりが読み取れない。刀磨の貧血とそれによるローテンションも、周りも似た調子なので表情を描けないのを逃げた言い訳にしか見えない始末。
その中でデフォルメ調に描かれたミルだけが変に感情豊かに描写されているので、異物感として変に浮いてしまっていました。
コマも決めゴマすらそこまで目を引かれず演出や効果で拙さ乏しさを補うような事もない。派手さもない。命の危険も地球の危険も緊張感が伝わらないので擬似体験的な実感がない。これでは楽しもうとしても乗り切れません。

話は盛り上がらない、絵で盛り上げてもくれない。これはちょっと支持するには出来ません。寧ろ削られたという暗くなりそうな部分が気になってしまいました。削った結果薄くなるなら削らない方が良かったのでは……と。





【恋は戦争/支持しない】
かなり悩みました。まさに紙一重。
序盤は面白くないような、主人公が悪ノリしてどうこうみたいなよくあるギャグ読み切りに見えましたが、読み進めると成る程成る程。
ギャグではあるのに目的が終始一貫していて、テンポ良く話やアイディアが途切れる事なく畳み掛けてくる。そして馬鹿馬鹿しい目的へ一心不乱に知恵と手段を振り絞っていくので、まるでストーリー漫画みたいに最後まで読めました。
特に計画実行からラストへの流れや進め方は見事。基本的に生徒側は画面、校長側は台詞と掛け合いで知恵比べを表現していて対比が漫画としてしっかり出来ているし、全力で目的達成に邁進しているのが伝わってきます。
絵に若干のクドさはあるものの過度のしつこさは回避しているので手を止めるには至らない、例えばこの絵で変顔連発とかされていたら眉を顰めながら読む事になっていたでしょうし。
キャラクターも格好良い可愛い得体が知れないと取り揃えていて、それで真面目に馬鹿馬鹿しく突き進んでいる楽しさがあり、もう少しだけ磨き上げればそこまで人を選ばずに済むのではないでしょうか。

……ここまで誉めておいて支持しないとした理由はただ一点。これ、連載出来るんですかね。
目的が女子との交流一点だけなので早々にネタが枯渇しかねない事、ギャグはギャグなので変にシリアスを織り混ぜたり複数話構成を連発するとこの持ち味が損なわれてしまうのではないかと言う事。
勿論発想が素晴らしくネタは簡単には枯渇しないとか連載となれば上手くコメディに仕立てあげてくるとかあるかも知れないですが、どうしてもそのハードルが高く見えてしまう。
もしもこれで一年連載してまだまだ続けられるぞとか出来たら、結構な天才だと思います。それぐらいに思えます。

支持はしないけどアンケには入れる、そんな難しい作品でした。一先ず合う合わないは最終結論として読んではみる事を勧めます。
一番面白くはありましたし、もし優勝しても何一つ文句はありません。それで案の定連載無理でしたなら文句言うけど。





【Apollo -アポロ-/支持する】
これまた難しい作品が……。
何度も本誌に読み切りを載せているだけあって絵も設定もかなりキャッチー、完成度はかなり高いと思います。
設定は魂の21gやマイナス感情からのゴーストが複雑過ぎずストンと受け止めやすい。連載作品となると些かシンプルですが、それはもう少し深化するなり明確な敵を作るなりでカバー出来る範囲です。
登場人物は分かりやすく絞られているので視点が拡散せず話に入りやすく、万人受けし易いデザインながら絵の特色も顕れていて、好印象を抱きやすいですね。アポロは格好いいしウィリアムは取っ付きやすい、デザインもキャラも上手く役割分担が出来ています。
画面のお洒落さはかなり抜きん出ていますから、これだけでも訴えるものはあるレベルです。

ただ完成度が高いだけに難点もかなり際立って見えます。
まず受け止めやすいのは良いんですが、裏を返せば浅かったりあっさりしている所が目に見えて多い。
表情が弱いからなのか演出が弱いからなのか、ウィリアムの幽霊恐怖症があってもなくてもいいような薄いキャラ付けになってしまっている。パイドパイパーという如何にも特色ある別名が笛っぽい武器にしか共通点がない(笛の音のようにはピンと来ませんでした)、童話なぞらえもNo.9もその瞬間だけ。
いずれもキャッチーな設定ではあるんですが、それらを表面しか触れないので一瞬引っ掛かるだけで気付くくらい浅く映ってしまう。一言加えれば、一コマ加えれば違って映る部分が多く、受け入れやすさの代償に省略し倒した感はあります。
そしてキャラクターデザインはかなり上手いし動きも描けているのに、肝腎のバトルの見せ場が惜しい所で弱い。アポロの武器が一体どういう物なのか掴みきれないから何をしているか、かなり分かり辛い。例えば「なんてラッキーなんだ……!!」の代わりに「魂を刃に……!!」とするだけで具体的に何でとどめを差したかが伝わるのに。
そして大ボス戦は、ボスゴーストが他のゴーストと殆ど同じデザインなのでボス感が全然無い。アポロにとって雑魚でも読み切りとしてはラスボスなんですから、何かしら違いが欲しかった。そして倒した場面はアポロが奥側から攻撃していて小さいから迫力に著しく欠ける。多分アポロを手前にするだけで解決したと思うんですが、お陰でかなりあっさりした見せ場になってしまっていて、スッキリ感に欠けたラストとなりました。
あとはウィリアムは紛いなりにゴーストバスターを目指しているならもうちょい見せ場があっても……逃げるだけは流石に拍子抜けです。

正直、魅力となる部分はちょっと調整するだけで連載に来てもおかしくないくらいのレベルです。なのにと言うかだからと言うか、完成度に比例して欠点も凄くクッキリ色濃く見えてしまう。どちらを強く持つかでかなり印象が変わってくるのではないでしょうか。
ただ、それらの欠点は指摘されれば何とか直る、連載するにあたり何とか修正出来る範囲に思えました。それだけ、魅力的な部分で作者のポテンシャルが伝わってくるのも確かでして。
支持するしないはかなり悩みましたし駄目な理由もこれでもかと見えるし分かるんですが、それでも一回くらいこの作品で連載していいんじゃないかと言うのが強く上回りました。
その際はどうか、どうか欠点を直すだけで済ませて下さい。このままだと完全な未知数ですが、大幅に変えようとしたら全て壊れて100%失敗しますから。





【ミストの怪剖録/支持する】
また怪異かと思いましたが面白かったです。
まずは絵がいいですね。特徴的なのに黒と白のバランスがしっかり取れていてかなり見易い、それぞれのキャラに重複が少ないので混乱も少ない、それでいて不気味な所は不気味で強調したい所は此処と受け止め易い。結構気持ち悪い描写なのにかなりスイスイ読めたのは、これらの調和がキチンとしていたからでしょう。
強いて言えばヒロインと変屍体のデザインはどうしても被ってしまうので、魂官摘出の2ページで一瞬混乱したぐらい……ですがこればっかりはどうしようも無いので。手を差し伸べる所を昔の姿に戻すくらい?これも良いかは分かりませんし。ここにしても右ページの黒と左ページの白がまさに明白で「救われた」と一目で分かるように計算された良いシーンです。
話も単に相手を薙ぎ倒すでなく怪異医療とでも言うのでしょうか、あくまでもちゃんと相手を救う方向に重点が取られていて題材とキャラ描写に一貫性がある。特にミストが変屍体として変屍体に寄り添う姿は一見特異な筈なのに善悪の判断を迷いなく描いていて、その様に何の違和感も無く且つヒーローとしても成立している。
両親の異様性や呵責や同情の不要さを冒頭から容赦なく描けてこその流れですから、この取り上げるべきを取り上げる作り方はこれまた絶妙なバランス能力を評価すべきと思います。

難点は散々ミストの大人姿を匂わせたせいでそれになった時のインパクトが薄く「やっぱりな感」が出てしまった所。小さい理由も「楽」で済ませてしまい必要感が伝わらなかったので、これなら最初からずっと大人姿の方がヒーローとしての格好良さが際立っていたのでは。或いは
用途に応じて伸び縮みを繰り返し使い分け、常人じゃない印象作りに寄与させてしまうか。
あとは第一印象から連想してしまうバトル物では無くあくまでも医療物であり、大ゴマも特に強く使っていない(使わなくていいから)ので、そちらを期待してしまうとやや物足りなさが出てしまう……これは最後まで読むか読み返せばどうという事は無いですが。

この作品は特にバランス感覚やメリハリに特化していたと思います。お陰で地味になりがちな医療物を怪異を盛り込む事での少年漫画化に成功していますし、読み切りとしてもかなりの出来映えとなっていたのではないでしょうか。
無論連載としても題材を描き易いし長期を見据えた敵も作り易い。完成度という点に置いて、5作品中1番と言ってしまっても過言では無かったです。
1号分の隙間が金未来のお祭りな流れを断ってしまったんじゃないかと心配しましたがどうしてどうして、杞憂となったのはこの作品がしっかりとした力を持った物だったからと思います。










【総評】
重ねてになりますが怪異物多いわ!

ただ、一定以上の水準を備えた作品が多く、近年の中では一番レベルが高かった年だと思います。個人的感想ですが支持するが5作品中3作品に面白かったと言えるのがプラス1作品と、開催判明時とは印象が打って変わって金未来杯をやって良かったと言えるくらいの作品が並んでくれました。
怪異被りは流石にどうかとも思いはしますが、変に回避して描きたい物が描けず良さを消してしまうよりは、結果としては良かったのではないのでしょうかね。

順位付けをするとしたらこうなりますか。

1.Apollo -アポロ-
2.ミストの怪剖録
3.恋は戦争
3.仄見える少年
5.血液ヌル

アポロの抜き出た部分が完成度のミストを上回ったかなと思いこの並びですが、好みの範囲です。4つの内ならばどれが優勝となっても納得の出来映え、良い意味で悩ませていただきました。
正直に言えば、久し振りに優勝作品以外からも連載作品が出ても良いのではないでしょうか。結果どれも失敗するかも知れませんしそうなれば残念とか何やってんだとかになりはしますが、このまま優勝作品以外を捨ててしまうにはあまりに惜しい。そのくらい粒が揃った面々でありました。
これなら来年以降の開催も、期待出来るのではないでしょうかね。良い物見れました。





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  1. 2018/10/03(水) 20:52:30|
  2. ジャンプ感想
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

個人的な感想ですが、確かに今年の金未来は実力派揃いの優秀な方々でした
ただ、それ故、強烈な個性が感じられなかったなと思います
長期連載作品が中々出てこない今の連載陣と受賞者の長期低迷で信頼が地に堕ちた金未来の現状を考えたら仕方無いのかなと
そう言う意味では編集は勝負に行ったと思います
  1. 2018/10/04(木) 12:57:20 |
  2. URL |
  3. #HvMj4eJM
  4. [ 編集 ]

恋は戦争以外は似た作風ですが、恋は戦争の時は読み切りあったりするのでどうなるか読めないですね。
どの作品もハイレベルでした。
  1. 2018/10/10(水) 02:04:52 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

毎年金未来に対して辛口な桐嶋さんがこの評価とは中々.....
と冗談はさておき、確かに今年はレベルの高い方でしたね。前の2年が悲惨な面々だったのもあって、より一層それを実感出来ました。
個人的好みとしては
仄>ミスト≧アポロ>恋戦>>>ヌル
って感じですね。全体的にレベルが高かった分、頭一つ抜けた作品もなかったので、どれが優勝するのか予想がいつも以上につけづらいです。
  1. 2018/10/10(水) 10:18:25 |
  2. URL |
  3. djkoh #-
  4. [ 編集 ]

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